1. 概要
八味地黄丸は、加齢や慢性的な体力低下に伴う「腎虚(じんきょ)」の症状に広く使われる漢方薬です。特に腰や膝の冷え・痛み、頻尿や夜間尿、足腰のだるさなど、中高年以降に増える不調に対応します。
元は中国・宋代の医師劉完素が創案した「六味地黄丸」に、温める作用のある**桂皮(けいひ)と附子(ぶし)**を加えて作られた処方で、冷えを伴う腎虚に向いています。
2. 配合生薬と働き
生薬名 | 主な働き |
---|---|
地黄(じおう) | 腎陰を補い、体を潤す |
山茱萸(さんしゅゆ) | 腎と肝を補い、精を守る |
山薬(さんやく) | 脾と腎を補い、消化を助ける |
沢瀉(たくしゃ) | 余分な水分を排出しむくみを改善 |
茯苓(ぶくりょう) | 水分代謝を助け、精神を安定 |
牡丹皮(ぼたんぴ) | 血の巡りを改善し、炎症を鎮める |
桂皮(けいひ) | 体を温め、血行を促進 |
附子(ぶし) | 強力に温めて陽気を補う |
3. 主な効能・適応症
腰痛・膝の冷えや痛み
頻尿・夜間の多尿
足腰のだるさ・倦怠感
冷えを伴う下半身の不調
老化による体力低下、耳鳴り、視力低下
4. 向いている体質
冷え性で下半身が特に冷える
頻尿や夜間尿が多い
足腰が弱く疲れやすい
皮膚が乾燥しやすい
加齢による衰えを感じている
5. 日常生活での養生ポイント
下半身を温める服装(腹巻・レッグウォーマー)を活用
温かい飲み物を中心に摂取
足腰の筋力維持のため、軽いウォーキングやストレッチ
冷たい食べ物・飲み物の摂取を控える
睡眠時間をしっかり確保し、腎の休養を優先
6. 服用方法と注意点
一般的には朝晩、食前または食間に服用
附子を含むため、自己判断での長期服用は避け、必ず医師・薬剤師に相談
高血圧、心疾患、腎疾患のある方は注意
妊娠中の方は医師と相談のうえ服用可否を判断
7. まとめ
八味地黄丸は、冷えを伴う加齢性の体調不良に非常に効果的な処方です。六味地黄丸より温める力が強く、特に腰や膝の冷え・痛み、頻尿などの悩みに向いています。体質に合わせて正しく服用し、生活習慣の見直しと組み合わせることで、腎を補い健やかな毎日を支えます。